音程不安を無くすために誰もがまず耳を鍛えることを思い浮かべるのではないでしょうか。でも耳や音感としての判断は正しいのに、声にするとどうもピッチに違和感があると感じる人もいると思います。そんな人のための考え方や練習法を紹介します。
合わせて読みたい
はじめに
先日、ベリーメリーミュージックスクール全校で開催された『ベリメリ検定』ですが↓↓↓
≫ 『ベリメリ検定』とは?
生徒の皆さんには、そろそろその結果が届く頃だと思います。
日頃のレッスンの成果を試す機会として、その真剣さ、その熱い歌声を聴かせていただきました。
素晴らしい実力の人、原曲とは違うオリジナリティを込められた人、ギター弾き語り、オリジナル曲など。
本当に多様かつレベルが高く、僕もその講師の一員でありながらも「ボーカルスクールってこんなノリだったかな??」と感動しております。
なんと言いますか…もっとこう「淡々と反復練習」みたいなイメージがあるのですが、これはもう「アーティスト育成のプログラム」のように感じました。
そんな訳で「歌、音楽が上手くなるのは当たり前。道を切り開く!!」をモットーに、今後もレッスン頑張って参ります。
「フレーズ」としての音感
これまで何百という検定音源を聴かせていただいた中で、多くの人に共通する「弱さ」もありました。
それは「音程コントロール」です。
皆さん「音感」は良いです。
きっと発声練習時のように、1音に的を絞った場合は正確に捉えられる生徒さんばかりだと思います。
でも「1音」が「2音」になり、「5音」「10音」と連なると「点」ではなく「道」となります。
「線」と表現したいところですが「道」です。
「登り坂」「下り坂」「ぬかるんだ道」「滑りやすい道」など色々ありますが、そのそれぞれの「道」には「それぞれの歩き方」があります。
「地面を掴む力加減」や「慌てない意識」など想像出来ますよね。
「音階の道」つまり「フレーズ」を音感良く進むためには、実際の道に近いものがあると思います。
検定音源を聴いていると「フレーズの入り口では正確な音程アプローチが出来ていても、その後の高音が届き切っていない、低音が何か気持ち悪いピッチ感になるなど”1フレーズ”として勿体無い」なと感じた事が多かったです。
という訳で、今回は「1フレーズをピッチ感良く歌えるようになる」為に意識したい事を挙げていきたいと思います。
「正確な音感」のために必要なこと
「”音感”のために一番大事な体の部位はどこ?」と聞かれたら、ほぼ全員が「耳」と答えると思います。
僕もそう答えると思います。
でも、歌においては「耳で正しい音がわかっていれば正しい音程の声が出せるという訳ではない」です。
それでも「音感が良くなりたい」「耳が良くなりたい」と「耳」を鍛えようとしてしまう生徒さん多いです。
勿論、鍛えて下さい。
鍛えて絶対に損は無いです。
例えば「マラソン」に置き換えて考えてみます。
皆さんがこれからマラソンを走るとしたら、「体」や「シューズ」など自身の状態を気にするのは勿論ですが「どの様なコースなのか」も考えると思います。
「登り坂」と言ってもどのくらいの傾斜なのか、「路面の状態」がアスファルトなのか土なのかでも大きくプランが変わると思います。
実際にコースを目で見て考えたいですよね。
そして「この坂ではどのくらいの力が要る」とか「ペース配分はどうしよう」とか考えます。
その坂を見て知る事が出来ても「予定通り走れるかはまた別の話」です。
それは自身の体のコントロールにかかってきます。
実際に走ってみて「予定通り」と感じたり「ちょっと緩めなきゃ」「脚力強めなきゃ」という判断も必要になります。
その一連が「1フレーズを歌う時の意識」と似ていると僕は感じています。
- どんな坂のメロディを走るのかを理解出来ているか
- そこを上手く走らせる為の体のコントロール
- コースから外れていないか確認するための聴き取りの能力(耳)
・・・というような繰り返しが、正確なフレーズを作るために必要な心掛けになると思います。
要は「耳だけではない」と言うことです。
歌う「メロディ」を理解する
「どんなメロディを歌うのか?」を視覚的に表してくれているのが「楽譜音符」です。
でも「楽譜なんて読めない」と思っている人の方が多いですよね。
読めたところで前述した様に正しい声となるかは別問題ですし。
例えば、ピアノなど楽器はチューニングさえしっかり出来ていたら、テンション高い人が弾いても体調悪い人が弾いても「ド」は「ド」です。
「音程」の事だけでいえば「ド」は「ド」なんです。
でも、「歌」ではテンション高い人と体調悪い人では「音程」や「ピッチ感」が変わる可能性があります。
それは僕ら人間が「力(発声の強さ)が音程に影響しまう楽器」だからなんだと思います。
前回の記事で、新宿校つんた先生が「高音を恐れないメンタルが大事」と書かれていましたが↓↓↓
ホントその通りだと思います。
そして、それが「何のためのメンタルか?」です。
高音は「発声の力(力みではなく)」が要るんですよって事だと思います。
逆に低音では「力の緩め」も必要です。
「低音では落ち着くメンタルが大事」となるでしょうか。
楽譜が読めない場合は、上記画像のように歌詞の上に「音程の上がり下がり=力の上がり下がりの線」を自分なりに書いてみて下さい。
力の上がり下がりだけではなく「力の源のブレスなどの目印も足す」と更に良いです。
楽譜ならぬ「力譜」とでも言いましょうか。
これをもとに歌唱してみるだけでも「自分が今までいかに闇雲に歌っていのか」を感じる人も居ると思います。
「ここは意外と上昇のメロディなんだ」「ここの下り幅は、こんなに大きいんだ」などを気付きながら「1フレーズ」と向き合って貰えるキッカケにして欲しいです。
音程のための体のコントロール
次に、見通しの良くなった「1フレーズ」を正確に走るために「どの様な体のコントロールが必要か」です。
前述した様に、今回は「力加減」が重要ということに絞ります。
「力加減をコントロールして正しい音程を狙っていってください」と言うことです。
「ド」と、そこから1オクターブ上の「ド」のそれぞれの発声を行なってみてください。
すると「力の加え方」が違うことを感じたと思います。
低い「ド」の力加減のままオクターブ上の「ド」を出そうとする時、逆にオクターブ上の「ド」の力加減のまま低い「ド」を出そうとすると音感が迷子になります。
それぞれの音程には、それぞれの良き力加減があるんです。
文章にすると当たり前のことに感じますが、これを皆さんは「”力”ではなく”耳”だけを頼りにやろうとしている」ように感じます。
ベリメリ検定で最も多く感じたのもこの点です。
頑張って音階を追おうとしているのは伝わるのですが、一定な力で歌うので「高低が上手く振られていない」印象です。
発声練習時に「正しい音程か」「綺麗な声か」を求めることも大事ですが、それに加えて「どの程度の力加減がその音程にマッチするか?」も意識することも大事です。
僕個人の話で言いますと、ピアノ鍵盤の真ん中のドで20%、ソで60%、オクターブ上のドで全力みたいな分布が自分の中にあります。
僕は高音ほど鼻腔に掛けていく歌い方をしますので、「力み」だけではなく「腹圧」や「呼気の力」も含めます。
こんな風に、自分が出せる音域の中で「何の音は何%くらい」みたいな階段を作れるようになると狙った音程を出しやすくなると思います。
さらに「強弱の抑揚」まで自然に手に入れられると思いますよ。
正しい「聴き取り」を高める方法
「聴き取り」においては「耳」が一番大事になってくると思います。
カラオケや楽器伴奏などの音との距離感を、自身の声が正しい「相対感」で発声できているかで「心地良さ」が変わってきます。
その「相対感」を確認するのが「耳」ですね。
ただ、これが歌いながらリアルタイムで確認や修正が出来るようになるまでが非常に難しいです。
「耳を鍛える」には「才能」も必要ですが、僕は「経験」が大きいと思います。
そこで重要なのが、やはり「レコーディング」なんです。
レコーディングにあまり意味を感じない生徒さんも居ます。
「自分の声を聞き慣れてなくてなんか気持ち悪い」
「下手さを感じて辛い」
「技術を学びたいのであって記録に残したいんじゃない」
・・・など、色んな話を聞きます。
それに対して「違うんです」と書きました↓↓↓
レコーディングでは、以下のことがちゃんと出来ているかが「確認」ができます↓↓↓
- どんな坂のメロディを走るのかを理解出来ているか
- そこを上手く走らせる為の体のコントロール
- コースから外れていないか確認するための聴き取りの能力(耳)
もちろん僕たち講師も多様なアドバイスはしますがご自身で判断をする癖を付ける機会になるはずなんです。
レコーディングと聞くと「CDデビュー」や「アーティスティック」な感じがして高尚に感じてしまうのですかね。
確かに「練習を重ねて最高状態に行き着いた時に封入するもの」のイメージもありますね。
いえいえ、今の時代レコーディングは発声練習と変わらないくらい「手軽」です。
「1フレーズ録りました〜音を上手く操れてませんでした〜歌い直しました〜でもまた上手くいかないままレッスン終わりました〜また来週やりま〜す」で良いのです。
「確認」と「調整」を繰り返すことが「経験」になり、結果「耳」が良くなります。
まとめ
- どんなメロディを歌うのかを理解出来ているか=歌詞の上にでも音程や力の上下を表す線を書き込んでみて下さい
- 音程を捉えるための体のコントロール=発声練習時から「ド」は何%の力、「レ」は…と遊んでみて下さい
- 聴き取りの能力=レコーディングレッスンを増やしてみて下さい
これらで劇的に音感が良くなる方もいらっしゃると思います。
すぐに効果が出なかったとしても「歌いながら考えていることが今までと違うな」と感じるはずです。
「音程」、「強弱」、今回は書きませんでしたが「リズム」も大事です。
全てを操っている「感覚」で歌えた時に初めて『歌うことが気持ち良い!!』となると思います。
是非、一連取り組んでみてください。
この記事を書いた人
大学在学中、大阪を中心として音楽活動開始。YAMAHA MUSICQUESTをはじめ、数多くのコンテストに合格。大阪でのインディーズCDリリースやバンド活動を経て2002年ACE OF HEARTS よりソロシンガーソングライターaoiとしてデビュー。