大きな声、ロングトーン、強弱のあるフレージング、どれもお腹の支えを使った発声が必要となります。お腹に圧力をかけて支えるとはどのようなものなのか?どのようなトレーニングがあるのか?腹圧について実際のレッスンにて効果のあったもの、理解するために出来るだけ簡単なものを紹介します。
合わせて読みたい
はじめに
日常の中でも「何か”歌”のためになる事はないか?」そんな観点で生徒の皆さんにお教え出来ることを日々考えているベリーメリーミュージックスクール名古屋校チーフのアオイです。
例えば、直接的な体の鍛えでいきますと「ボクシング」のトレーニング。
素人ながらではありますが「呼吸」や「腹圧」を強化する目的で生徒の皆さんと集まりトレーニングすることがあります。
例えば「写真撮影会」。
一枚の絵の中に入れ込みたい「表現」や「強調したいもの」を考える練習になりますし、ブレない写真のためには「腹圧」を使った体幹の安定も必要です。
ボクシングと写真が日常かと言われるとそうでないかもしれませんが、始めてしまえば身近なものになりますので東海にお住まいの皆さんや名古屋校の生徒さんで興味のある方は是非講師受付に尋ねてみて下さい。
さて、どちらの例にも出てきました「腹圧」について今回は書いてみたいと思います。
歌唱における「腹圧」がどのように大切なものかや鍛え方を解説させていただきます。
歌唱における「腹圧」について
歌を習い始めると必ずと言って良いほど聞く言葉が「腹式」ですね。
腹式と言いますと、後に続く言葉は「呼吸」と思い浮かべる人が多いと思います。
勿論大正解ではあるのですが、僕の個人的な意見はそうではありません。
じゃあ何か?それが「腹圧」です。
ざっと説明しますと「腹式呼吸」のカラクリはこうです↓↓↓
腹筋を緩めて内臓を前に放り出す→横隔膜の可動範囲が広まる→肺の体積が普段より稼げる→吸気量が上がる。
個人的には「いやいや、肺の体積など上げるよりブレスの回数を増やしたり、ブレスの回数を増やすためにブレスを入れ込めるタイミングを計れるリズム感を強化した方が良いのではないか?」と思っております。
では、腹式呼吸で何が大事かと言いますと「息を取り込んだ後のその息の管理の具合」だと思っております。
それを操るのが「腹圧」です。
多くの空気を取り込めても、少ない空気しか取り込めなかたとしても、無駄に消費していてはどちらも意味がないと思います。
腹圧を使い操り、その時々で出したい声を作っていくという感じです。
「腹式呼吸」ではなく「腹式発声」という言葉の方が僕的にはしっくりきます。
具体的には「強い声」、「声量のある声」に腹圧は必要です。
「長〜く伸ばす声」にも腹圧は必要です。
「ウィスパーボイス」のように息の消費が激しい声にも腹圧は必要です。
「クレッシェンド」や「デクレッシェンド」の様な強弱をつける「抑揚技術」にも必要です。
「アクセント」を入れる抜くのようなロックなフレージングにも必要です。
結局全部に必要やん!!
書きながら自分にツッこんでしまうほど全てに必要でした。
そのくらい大事な腹圧ですが、実際のレッスンでも言葉だけでは「???」となる生徒さんが多いです。
ですので、過去に実際生徒さんに効き目の高かった事でなおかつ簡単だったものをいくつか紹介したいと思います。
「指一本」で腹圧を感じる
「腹圧を掛けろ」と言われても、まずどれが正解なのか解らないと取り組みようが無いですよね。
「指一本」ここでは親指がやり易いかと思いますので、親指をズボンやスカートのウエスト部分に突っ込んでください。
おへその辺りでズボンとお腹の間に指を入れる感じです。(写真参照)
腹式呼吸で習う腹筋を緩めて吸気するが出来ている場合お腹が前に出て来ますので、入れた親指はお腹とズボンで挟まれる圧力を感じると思います。
そこから発声を行なった場合、さらにその親指に圧迫が掛かるようなお腹の動きを目指して欲しいです。
さらに掛かる圧力は「ほんの少し」で良く、2倍も3倍もという事ではないです。
要はお腹の内側から外側へ押し出す力が腹圧です。
指の感覚も使って測れますので、腹筋やお腹だけで感じようとするよりもわかりやすいかと思います。
逆に腹筋やお腹だけで感じようとすると妙に固める腹筋の動きにしてしまう人も多いので、指の感触に頼るほうが良いかもしれません。
体の仕組みは同じなのですが紙の紐を腰に巻いて、その紐を手を使わずお腹の押し出す力だけでちぎってもらう事で理解が出来た生徒さんもいらっしゃいました。
体験レッスンでよくさせて頂く質問なのですが「息を吸うとお腹はどうなりますか?」の問いには「膨らみます」と大体の人は答えてくださるのですが、「では声を出したらそのお腹はどうなりますか?」の質問には皆さん凄く迷われます。
膨らんだから次はへこむという感覚が強いのか「へこむ」と答えられる方がほとんどです。
上記にある確認の仕方で書きました様に「更に少し膨らむ」ぐらいの感覚でいて頂いた方が良いかと思います。
とはいえ人間誰しも長ーく声を出し続けていると最後には凹みます。
すぐに凹んでしまわないように支えて粘る…そんな感覚で良いかと思います。
お腹の内側から外側へ押し出す力、これを意識した体のコントロールを覚えてみて下さい。
椅子を使った腹圧トレーニング
「腹圧」をネットで検索してみますと、歌唱関連ではなく「体幹」や「姿勢」についてのものが多く出てきますね。
そういう意味ではブレたパンチを打たないために腹圧を使うボクシング練習、ブレた写真にしないための腹圧写真練習は効き目があるのかも知れません。
とはいえ、どちらも手軽ではないので手軽に鍛えられるものを紹介します。
- 背もたれの無い椅子に浅目に腰掛ける。
- そのままゆっくり背中を倒す。
- その姿勢のまま発声練習を行う。
昔部活で空気椅子という脚を鍛えるトレーニングがありましたが、これは「空気リクライニング」とでも言う感じでしょうか。
あまり無理な角度まで頑張らなくて良いです。
軽〜くお腹が突っ張る程度の角度から始めてください。
腹筋を鍛えるのではなく、あくまでも「内から外への力の掛け方の慣れ」の練習ですので「角度」より行なっている「時間の長さ」の方が大事です。
傾けた背中が後ろに倒れ込まずに、耐えられている時点で腹圧は使えているはずです。
その上で発声することで「腹圧」の感覚を覚えるトレーニングです。
それだけで「勝手に声量が上がった」とか「声が長く続くぞ」と感じられる人も多いと思います。
無理のない角度といえど、1分2分行っていると腹筋も痛くなってくると思います。
痛みの消えないうちに立ち上がって発声練習を続けてみて下さい。
痛みがお腹のどこにどの様に力を加えれば良いかをアシスト機能の様に教えてくれます。
背中を傾けたトレーニングを行なっていても、実際歌う時は傾けないですもんね。
ですので、背中を傾けていないのに傾けた時に使うかのような腹圧を傾けていない姿勢でも使えるようにする、という言葉にするとややこしい説明です(笑。
最近は応援団という部活やその映像を見かける事が少なくなってきましたが、甲子園の中継などで見かけますよね。
「フレーフレー」って背中をそらして叫んでいませんか?
僕もあれは気合の現れかぐらいにしか思ってなかったのですが、きっと腹圧をかけて遠くの選手まで声を届かせているのでしょうね。
体で驚かせる
もう一つ、最近特に生徒さんから成長効果を感じてかつ簡単なものを紹介します。
子供の頃は特に皆さん経験あるかと思うのですが、友達や家族から隠れておいて急に「わっ!!」って驚かせたこと。
驚かせる時にきっと棒立ちで体を動かさず声を出す人はいないと思うんです。
足を一歩踏み出しクマのようなポーズで手を挙げて「わっ!!」だと思います。
これむっちゃ腹圧を使っていると思います。
驚かせたいのでそれなりの勢いを持って一歩足を踏み出しますよね。
でも、体がそのまま前に倒れ込まないように体幹(腹圧)を使って支えています。
両手を上げていれば尚更、腹圧をかけないと耐えきれません。
結果自分でも驚くような声量が出てしまう。
ボーカルレッスンなのに真剣にこの一連の練習をしてもらっていたりします。
側から見ればおかしな練習ですよね~
でもこれが結構効果抜群なんです。
特に声量に自信が無かった人ほど変わります。
音楽的な、そして歌唱的な練習じゃないからなのかも知れませんね。
歌唱練習と思うと喉だ音程だフォームだと考えすぎて土台となる腹圧が抜け落ちてしまうのではないのでしょうか。
ボクシングでも体重移動や体幹を使わずに打つパンチを「手打ち」だと表現することがあります。
力と速度のないジャブを打ってしまう人には同じく人を驚かせる体の動きから教えると急にカッコ良いジャブに変わったりします。
歌でもパンチでも結局は腹圧が重要で凄く影響するという事なんでしょうね。
勿論その体を使いつつ音程を取ったり、リズムに乗れる練習も歌唱練習では必要ですので音楽的なものと組み合わせた練習も行っていただきます。
とにかく歌に関わらず強い声強い力を生み出す事に先ずは取り組んでいただけたらと思います。
最後に
最後によく生徒さんから「腹筋を鍛えた方が良いのでしょうか?」と質問を頂きます。
勿論鍛えて損になることはないとは思いますが、これまで書いてきましたように「固める力」ではなく「押し出す力」です。
腹筋のまだ鍛えられていない赤ちゃんでも泣き声は大きいですもんね。
そういえば大声で泣いてる赤ちゃんは皆んなのけぞり気味な様な気がしますね….。
僕らはいつから純粋な心と腹圧を忘れて成長してしまうのでしょう。
ということでフォームだ喉だあまり考え込んでしまわず体と対話しながらの練習を行なってみてはいかがでしょうか。
この記事を書いた人
大学在学中、大阪を中心として音楽活動開始。YAMAHA MUSICQUESTをはじめ、数多くのコンテストに合格。大阪でのインディーズCDリリースやバンド活動を経て2002年ACE OF HEARTS よりソロシンガーソングライターaoiとしてデビュー。